ブリージングノイズ


圧縮伸張方式では、録音時に信号を圧縮し、再生時に信号を元に戻す(伸張)という加工を行います。
では何故圧縮伸張を行うとノイズが減るのでしょうか?
2次の圧縮・伸張動作を行なうケースで解説してみましょう。

圧縮・伸張動作に於いてレベルがそのままの(圧縮・伸張動作を行わない)基準レベルを0dB、テープのノイズレベルをNdB、信号をSdBとします。
原音をそのままテープに記録した場合、SN比は(S-N)dBとなります。
信号を圧縮して記録した場合、記録信号は(S/2)dBとなり、SN比は(S/2-N)dBとなります。
再生時は信号を元のSdBに戻すため、(S/2)dBの伸張を受けます。
この伸張動作は信号とノイズの両方に施されるため、伸張後の信号はSdB、ノイズは(N+S/2)dBとなります。(以下)





従ってSN比は(S/2-N)dBになり、原音記録の場合に比べ

 (S/2-N)-(S-N)=-S/2 (dB)

となり、信号Sが基準レベル0dBを越えない範囲では、信号レベルが低いほどSN比の改善度が増すことになります。

さて、ここで注目すべきは、伸張後のノイズレベルです。
信号SdBに対し、ノイズレベルは(N+S/2)dBで表されるわけですから、即ち信号レベルの変化に伴い、ノイズレベルも常に変動するということです。
これは信号レベルによってノイズが振幅変調を受けることになり、定常的なノイズに比べて変調ノイズは低レベルでも非常に耳に付きやすくなります。






このノイズは音楽信号の背景で息継ぎのような音で聴取されることから、ブリージングノイズ(Breathing Noise)と呼ばれています。
ブリージングノイズは、圧縮伸張方式では不可避な本質的な問題とされ、圧縮伸張率が高いほどノイズレベルの変化が顕著になります。
ノイズリダクションシステムでは、SN比やダイナミックレンジを拡大しつつ、如何にブリージングノイズや音質変化を最小限に抑えるかがポイントとなります。