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R1.3 |
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(写真上)型番:NRA-5500 定価:59800円 発売:1979年5月
(写真下)型番:NRA-3300 定価:42000円 発売:1980年2月
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● Super Dの概要
Super D方式は、OTTO(三洋電機のオーディオブランド)が独自に開発したNRシステムで、特徴は直線圧縮伸張方式と帯域分割方式を組み合わせ、録再時のレベル合わせの手間を省きつつ、圧縮伸張方式のデメリットであるブリージングノイズを抑えていることです。
オーディオ帯域全域で圧縮伸張を行っているため、高域だけなく低域ノイズにも効果があります。
実際、Super D使用時のノイズレベルはdbx方式に匹敵する性能で、ブリージングはadresと同程度にまで抑えられており、圧縮伸張方式としてはベストな方式の1つでした。
他社のNRユニットが針式のアナログメーターを使用していたのに対し、青色FLディスプレイメーターを採用、ラックマウント1Uサイズの薄型ボディーにシンプルなパネルと、近未来的な外観を持つユニットでした。
その他、NRA-5500は3ヘッド同時モニター可能、NRA-3300はマイク入力を装備していました。
残念ながら、OTTO1社では普及するに及ばず、翌年ドルビーC方式が発表され、遅すぎたデビューが悔やまれます。
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● NRA-5500の仕様
NR効果:35dB〜40dB
圧縮伸張比:2
歪み率:0.15%(1kHz)
周波数特性:20Hz〜20kHz±1dB
外形寸法:440(幅)×52(高さ)×297(奥行)
mm
重さ:4.3kg
消費電力:12W
● NRA-3300の仕様
方式:レベル圧縮伸張方式・相補型帯域分割方式
圧縮伸張比:圧縮比1/2 ・ 伸張比2/1
SN比改善量:35〜40dB(SN比50dB以上のデッキで)
歪率:0.15%
チャンネル数:2チャンネル(録音・再生2チャンネル切換え式)
入力インピーダンス/感度
ライン入力:50kオーム/85mV
再生入力:50kオーム/100mV
マイク入力:400〜10kオーム/0.3mV
出力インピーダンス/感度
ライン出力:2kオーム以下/0.53mV(50kオーム負荷時)
録音出力:2kオーム以下/80mV(50kオーム負荷時)
周波数特性:エンコード・デコードにおいて、20Hz〜20kHz±2dB
IC:21個
ダイオード:40個
トランジスター:25個
電源:AC100V 50/60Hz共用
消費電力:8W
外形寸法:420(幅)×51(高さ)×292(奥行) (ツマミおよび脚を含む)
重さ:3.1kg
付属品:デモンストレーションテープ、調整ドライバー
×1
接続コード(ピンプラグ−ピンプラグ)×2
Super D方式の動作原理
Super D方式の設計ポイントは、直線圧縮伸張方式の原理的欠点であるブリージングノイズを抑えることにありました。
そこでレベル調整を必要とせず良好なSN比が得られる直線圧縮伸張方式に、ブリージング対策として帯域分割を行っています。
単一帯域処理の場合、高域信号成分が少ないにも関わらず、中低域信号成分により高域ノイズが高いレベルで変調されてブリージングノイズが生じるのに対し、帯域分割した場合は、中低域のノイズは主に中低域の音楽信号に、高域のノイズは主に高域の音楽信号によって、それぞれ変調されます。
従って中低域の信号レベルやノイズレベルに影響を受けることなく、高域信号が少なくても高域側のVCA(可変利得増幅器)の伸張操作で高域ノイズレベルを低く抑えることができ、それだけマスキング効果が増大することになります。
帯域分割の手法は、測定データより聴感特性にこだわって設計されたNakamichiのHi-Com
IIでも採用されたもので、直線圧縮伸張方式の欠陥とも言えるブリージングノイズに対する回答の1つだったと言えるでしょう。
Super D方式のブロックダイヤグラム
帯域2分割を行っているため、回路が高域と中低域用にそれぞれ2系統になっています。
帯域分割周波数は4.8kHzで、分割フィルタ特性は以下の通りです。
入力信号は、まずプリエンファシス回路に入り、次に信号は高域・低域で2分割し、一方でウェイティング回路を通して高域信号成分に回路動作を追従させつつ、高レベル高域信号が入ってきた時は圧縮器のVCAゲインを下げ、高域飽和を防止します。
レベル検出器はピーク応答形を採用し、入力信号に対する応答特性を高めています。
また、レベル検出器はVCA回路のゲインをコントロールし、演算増幅器の入力量・負帰還量を制御、圧縮伸張動作を行います。
下のグラフはエンコード・デコード特性です。
帯域分割を行っているため、帯域によって特性が異なっています。
以下は測定データです。
ブリージングノイズ測定
上段は単一帯域構成(おそらくdbx)、下段がSuper
Dのグラフです。
低域ブリージングノイズ
高域ブリージングノイズ
歪み率
リニアリティ
最後に周波数特性測定例です。
ノイズレベルの低さに注目です。
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基板サイズは大きいものの、シンメトリカルにエンコード・デコード回路が構成されていました。
専用ICが開発されていれば、もっとコンパクトにできたかと思います。
ジャンパー線が多く、メンテナンス性は悪いです。
(写真上:NRA-5500・写真下:NRA-3300)
(注:専用ICは存在しました。ページ下部の補足情報1参照のこと。2004/06/13)
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今はなきOTTOロゴが懐かしいです。
メーターは格好いいFL管式ですが、-20dB〜+5dB_OVERの範囲を12セグメントで表示するため、
音量レベルをモニターするには実用性が低く、キャリブレーションレベルモニター用と考えてよいかと思います。(-5dBにCALと表記されているのが見える)
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NRA-3300の場合、メーターの隣には、マイク入力と各種スイッチが並びます。
NRA-5500は、マイク入力がなく、REC/PLAYのスイッチがMONITOR(SOURCE/TAPE切換え)になります。
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PLAY LEVELは、基準レベル合わせに使うものです。具体的には、カセットテープにCAL信号を録音し、それを再生した時にレベルメーターが-5dB(CAL基準)になるよう、マイナスドライバーで回して調整します。
隣のCALは、基準レベル信号の出力ON/OFFスイッチです。
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右端には、マイク入力とライン入力のボリュームが並びます。
5500にはマイク入力がないため、3300の方がフロントパネルが煩雑になっています。
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上記理由により、5500ではフロントパネル中央に冠してあったSuper
Dのロゴが、3300では入力ボリュームの下に追いやられてしまいました。(ちょっと悲しい)
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リアパネル、入出力部分です。(NRA-3300)
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機種銘板。
驚くことに、シリアル番号は本体底面にラベル打ちされたものが貼ってある。何故底面!?
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NRA-3300の新製品ニュースリリースです。
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補足情報1
adresデッキ同様、OTTOもSuper D内蔵カセットデッキを発売していました。
1982年4月のオーディオ総合カタログから抜粋します。
Super Dはその圧倒的な効果を活かして、ダイナミックレンジ110dBをアピールしていたようです。
以下はそれぞれのカセットデッキの拡大写真です。
RD-D65 69800円
主な仕様
2ヘッドカセットデッキ
ワウフラッター:0.04%(WRMS)
周波数特性:30〜18,000Hz(メタル)
SN比:100dB(スーパーD ON)
電源・消費電力:AC100V・35W
寸法・重量:440×118×270(W/H/D) mm、5.7kg
RD-D60 59800円
主な仕様
2ヘッドカセットデッキ
ワウフラッター:0.05%(WRMS)
周波数特性:30〜18,000Hz(メタル)
SN比:100dB(スーパーD ON)
電源・消費電力:AC100V・15W
寸法・重量:440×106×296(W/H/D) mm、3.9kg
(リモコン別売)
これらのデッキに、NRA-3300相当の基板をどうやって詰め込んだのか謎でしたが、運良く実機を入手できたので内部を調べたところ、(おそらく演算増幅・VCA・レベル検出部分を集積した)Super
D専用IC・SD1000が使われていました。
つまりNRA-5500と3300をリリースした後、IC化を進めてカセットデッキ内蔵を可能にしたようです。
しかしその後はドルビーCが主流となり、新adres
ICと同様、使われなくなってしまったのは非常に残念なことです。
RD-D60 の内部です。
赤線部分がSuper D専用基板です。
全体の比率から分かる通り、NRA-3300の基板に比べてサイズで1/6、純粋にSuper
D回路として1/4(NRA-3300の基板にはマイク回路や各種スイッチも搭載されていたので)になっています。
Super D専用基板拡大写真です。
左半分が右チャンネル、右半分が左チャンネルになっています。
HPFとLPFのトリマーがあるので、低域と高域の分割までは通常の回路で行い、その後の圧縮伸張動作は専用ICで処理していると思われます。
幻のSuper D 専用IC・SD1000です。
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補足情報2
商品に付属していたものかどうか分かりませんが、Super
Dのデモテープを入手しました。
A面ではナレーション付きでSuper D ON/OFFの違いを聞かせ、B面にはスターウォーズのテーマをアレンジしたシンセサイザの曲が収録されています。
A面のSuper Dの効果の違いを聞かせる部分では、やや誇張した感がありますが、Super
Dが誇る圧倒的なダイナミックレンジと、ヒスノイズの少なさを十分に理解できるものとなっています。
補足情報3
NRA-5500は、当時OTTOが展開していた薄型コンポ5500シリーズの1つとして発売されていたようです。
当時の広告に、アンプやチューナーに5500の型番を採用したものが見受けられます。(以下)
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